【記憶屋】原作本のあらすじネタバレを紹介!感想レビューや考察も!

記憶屋の表紙画像

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織守きょうやさんの『記憶屋』

2020年1月に映画が公開されることで原作小説が改めて注目されていますね。

 

忘れたい記憶を消してくれるという「記憶屋」

そんな都市伝説の怪人が現実世界にいたら・・・?

 

そんなことを想像しながら読むと、とても考えさせられる作品です。

 

 

今回は織守きょうやさんの『記憶屋』について

 

  • あらすじやネタバレ
  • 感想や評価

 

を紹介していきます。

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記憶屋の簡単なあらすじ

「忘れたい記憶を消してくれる怪人がいる」

都市伝説レベルでまことしやかに言い伝えられる記憶屋。

しかし遼一には、記憶屋が存在するという確信があった。

 

遼一のまわりには、記憶屋に記憶を消された人間が3人いたのだ。

いずれも本人は忘れてしまっているから覚えていない。

2人目の記憶が消された時、遼一は記憶屋を本気で探し出そうと調査を始めた。

 

しかし、ある時ふと気づく。

 

自分の記憶も消されているということに…

記憶屋に近づくにつれ恐怖と闘うことになる遼一は、記憶屋の正体を暴くことができるのか?

記憶屋に関わった3人が織りなす3つの短編連作小説。

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記憶屋の詳しいあらすじとネタバレ

ここからはネタバレを含む詳しいあらすじを紹介していきますので、未読の方は注意してくださいね。

1st. Episode:ノーティス

このエピソードは遼一と、大学の先輩である澤田杏子の物語ー。

杏子との出会い

大学に入学してすぐの飲み会で澤田杏子という先輩に好意を持った遼一

しかし杏子は必ず20時頃には帰路につく。

その飲み会の時もそうだったし、友達同士のカラオケなどでも必ず早く帰るという。

遼一が後日、杏子に理由を尋ねてみたところ「夜道が怖いから」なのだという。

 

痴漢にあった経験から夜道が異常に怖くなり、その恐怖感が尋常ではないレベルであることを杏子自身も自覚しており心療内科にも通っているという。

遼一は、杏子と会った日は必ず家の前まで送るようにしていたが、ある日杏子から突然「記憶屋を知っているか」と聞かれた。

遠い昔に聞いたことがあるその言葉…遼一は確かに記憶屋という単語を知っていた。

暗い夜道は普通に怖い。ましてや杏子のような経験があったならなおさら。

荒療治の失敗

夜道の画像

遼一が一緒ならば夜道も歩けるようになっていた杏子。

ある日の飲み会の時、遼一はひとつの賭けに出た。

飲み会のお開きの時間にあえて用事ができたと言って席を外したのだ。

1人で帰らざるを得なくなった杏子は、どうにか最寄り駅までは帰ってこられたものの、そこから全く動けなくなってしまった。

その様子を見ていた遼一は、杏子の前に現れ荒療治を試したことを謝罪したが、杏子は自分の不甲斐なさを責めているようだった。

 

その日から杏子はたびたび記憶屋の話をするようになった。

荒療治を含め何をやっても改善しない自分のこの状況を治すには、原因となっている記憶そのものを消すしかないという結論に至ったからだった。

遼一!!なんつーことをするんだ!会って間もない(付き合ってもない)相手にすることじゃないよ。愛想つかされて当然の許されないことをしたように私には思える。

記憶屋の調査

パソコンの画像

遼一は記憶屋のことを調べてみることにした。

都市伝説関連のサイトで記憶屋に詳しい人物に出会い、色々と情報を集めるうち、思い出したことがあった。

遼一の幼馴染の真希が子供の頃、不自然に記憶が飛んでしまったことがあったのだ。

 

真希にとってとてもショックな出来事があり、手がつけられないほどに号泣していたにも関わらず、翌日にはそのことをすっかり忘れてしまっていた。

自分も子供だった遼一は、その時の真希のきょとんとした表情が忘れられずにいた。自分の頭がおかしくなったのかと思った。

 

もしかしたら、あれは記憶屋の仕業だったのかもしれないと遼一は思った。

忘れたい記憶って誰しも一つや二つあると思うし、記憶屋の需要はめっちゃありそう。

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杏子と記憶屋

杏子は本気で記憶屋を探し、本気で会おうとしているようだった。

遼一は「自分が支えるから」と説得を試みるが、杏子の気持ちは揺るがない。

 

自分が荒療治をしたせいで、杏子を追いつめたのではないかと遼一は猛省した。

大学に来なくなり何日も連絡が取れなくなった杏子にどうにか会いたいと考え、杏子の行きそうなところを片っ端から探し回った。

そして見つけたのは、真っ暗な夜道を歩く杏子だった。

 

絶対この道は歩かないようにしていると言っていた外灯もない真っ暗な道を杏子は歩いていた。

追いかけて声をかけた遼一のことを、杏子は、まったく覚えていなかった。

 

その後、遼一は杏子と話すこともできなくなり、何もかも曖昧な状態で時間は過ぎていった。

杏子は辛かった記憶を忘れて、ものすごく楽になったはず。こういう犯罪被害のような記憶は消してしまうのもアリかもしれない。

3人目の記憶

大学に講演で来ていた弁護士の高原という男から、突然電話がかかってきた。

「この間は、ありがとう」そう言われたが、遼一には何のことだかさっぱり思い当たる節がない。

講演は確かに聞いたが、個人的に連絡先を交換した覚えもない。

 

混乱していると、高原の口から「記憶屋」という単語が飛び出した。

瞬時に状況を理解してしまった遼一。

 

自分の記憶が消されている、記憶屋に関する記憶を消された、そう確信した。

高原の意見

弁護士の高原と会うことになった遼一は、自分の記憶が消されていることは伏せたままで事務所まで出向く。

 

どうやら遼一は記憶屋のことを調べていて、真相に近づきすぎたのか、記憶屋に記憶を消されたようだった。

高原も記憶屋に興味があるらしく、遼一から聞いた情報をもとに情報収集していた。

高原は、「辛すぎる記憶は人を死に至らしめることすらあるから記憶を消すことは一概に悪いことだとは言えない」という意見を述べたが、遼一は一貫して反対意見を持っていた。

それは自分自身の記憶が消されていること、忘れられた側のやりきれない経験があることからだった。

これはどちらの意見も正しいと思う。辛すぎる記憶は人を病ませるし死なせてしまうことすらある。記憶屋なんていなくても、忘れてしまえればどんなに楽かというのは辛い経験がある人は誰しも思ったことがあるんじゃないかな。

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2nd. Episode:ラスト・レター

このエピソードは弁護士高原と外村の物語ー。

高原と外村の出会い

外村はアルバイト先のクラブで高原に出会った。

高原は外村が作ったつまみや料理を絶賛し、自分のところで家政夫として働かないかとスカウトした。

 

実際に弁護士事務所兼自宅を見に行き、高原がゲイじゃないことを確認し、外村は高原法律事務所で働くことを決めた。

 

高原はめちゃくちゃ仕事はできたが、生活力はゼロで、外村は料理の腕をいかんなく発揮し高原とも良い関係を築けていた。

そんな日々が2年も過ぎたころ、外村は高原が治らない病にかかっていることを知る。

 

外村は「俺が死んだら開けて」と言われ、高原から分厚い封筒を預かっていた。

男性から住み込みで家政夫やってって言われたら、そりゃ疑うよねw

高原に依存する少女

高原の顧客の娘である七海は、高原に完全に恋心を抱いていた。

リストカット癖があった七海は高原の言葉によって救われた過去があり、それ以来、高原のことを心の底から尊敬し、たびたび事務所に入り浸るようになっていた。

七海は高原の病気のことは全く知らない。

 

最近、たびたび大学の後輩と会っている高原は、記憶屋のことを調べているらしいと外村は知っていた。

自ら記憶屋のことを調べてみた外村だったが、所詮は都市伝説でしかない記憶屋のことを高原が何のために調べているのかはわからなかった。

 

ある日、七海が事務所にいる時に、高原が倒れた。

その時の七海の取り乱し方は尋常ではなく、高原が死んだら自分も死ぬ!と言った。それが口だけではない危うさを外村も高原も感じていた。

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記憶屋との対面

高原の電話での会話を聞いてしまった外村は、高原の後をつけることにした。

記憶屋と会うに違いない、そう確信があった。

 

高原は「記憶屋」らしき人物と喫茶店で会い、話が終わって二人が別れたところを見計らって外村は記憶屋を追った。

そして呼びかけ、問うた。

  • 高原は何を依頼したのか
  • 自分の依頼は聞いてもらえるか
  • 他人の記憶を消すことはできるのか

 

しかしその答えをすべて聞く前に、高原がその場に現れたことで話は遮られた。

高原は外村にすべてを打ち明けた。

高原が記憶屋に依頼したのは、七海の記憶を消すことだった。

自分に依存しすぎている七海は、自分が死んだら後を追うかもしれない。

そうならないために七海の記憶を消して欲しい、そう依頼していたが、実際に遂行されるかどうかは高原自身は見届けることができない。

 

すべての後処理を外村に任せることを、高原は「ごめんね」という一言に込めた。

このエピソードを読んでしまうと、記憶を消すことは悪いことばかりではない、そう思えてくる。大切な人に死なれるくらいなら忘れられる方がいい、究極の選択だけど、気持ちはわかる。

オフ会

遼一は高原の死をしばらく経ってから知った。

事務所を訪れる途中で、偶然会った七海が高原のことをすっかり忘れている事実に直面し、また記憶屋だと確信する。

外村から高原の意図や記憶屋に会った事実などを聞き、記憶は消すべきではないという自身の意思は揺らぎつつあった。

 

都市伝説チャットでたびたびやり取りをしていたメンバーに、新情報を得た事実を伝えると、チャットは一気に盛り上がりオフ会を開催することになった。

 

オフ会での一番のネタは、記憶屋に会ったという佐々操(ささ みさお)という女子高生についてだった。

これは高原から聞いた情報だったが、オフ会メンバーの協力で住所を特定することができていた。

 

遼一は佐々操に会いに行ってみることにした。

操の自宅前をうろうろしていると、操と少年が一緒に帰ってきたので、遼一は思い切って声をかけた。

「記憶屋」という単語に反応したのは、佐々操ではなく、一緒にいた少年の方だった。

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3rd.Episode:コーリング・フォー・モラトリアム

このエピソードは、佐々操と要の物語です。

操の記憶

要(かなめ)は育った環境が原因で、 普段からほとんど笑わず、誰にも心を開かないという少年だったが、操(みさお)だけは特別だった。

要は母親の影響で、男女間の恋愛感情というものに極端に嫌悪感を持っていた。

要は無口なことがクールでかっこいいと思われるところがあり、よく女子から告白されるようなこともあったが、告白されても嬉しいと思うどころが気持ち悪いとすら思ってしまうような状態だった。

要にとって操は本当に大切で特別な存在だったが、それはあくまでも恋愛感情ではなくて大切な友人としてのものだった。

操に告白された時、あまりにも動揺してしまい「迷惑だ。 やめてくれ。」 といった強い言葉で拒否の姿勢を示してしまった。

それからしばらくして、操は、要を好きだったことも、そもそも要が誰かということも、すべてを忘れてしまっていた。

自らの意思で記憶屋に会ったのだ。

操の立場からすれば、普通に断られるだけでも傷つくのに、迷惑だとか言われたらもう立ち直れないよね。ましてや家は隣で学校も同じで、これからどんな顔すれば良いのかわからない。思春期にこれは辛い。

記憶屋に迫る

遼一は佐々操に会いに行き、本人ではなく一緒にいた少年・要から話を聞くことができた。

自分が操を振ったことで彼女は記憶を無くしたこと、記憶屋と思われる人物に会ったことがあることなどを話した。

記憶屋との会話などから、操が自ら記憶を無くす選択をしたのは、決して失恋に傷つき辛かったからではなく、要の大切な心のよりどころである「友人としての操」を自分の行動によって奪ってしまったから、ということもわかっていた。

 

要は、こんなことを望んだわけではなかった。

遼一以上に、「忘れられた側の人間」だった。

普通に考えて、まさかそんなことになるなんて思わないよね。記憶屋なんて都市伝説なんだから。

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4th. Episode:ファースト・アンド・ラスト・コンタクト

このエピソードは遼一と記憶屋がいよいよ対面するお話です。

緑色のベンチの画像

記憶屋の噂は、女子高生を中心にどんどん広がり始めた。

その中に、「緑色のベンチで待っていると会える」というものがあった。

 

遼一は、何度か公園のベンチでポツンと座っている女子高生を見かける機会があったが、ある時、そのベンチに真希が座っているのを見かけてしまった。

 

確実に自分の身近に迫ってきている記憶屋の存在に、遼一は焦っていた。

オフ会メンバーと連絡が取れなくなっていたので、直接会いに行くことにした遼一だったが、会いにいった先で自分のことをすっかり忘れられているという事実に直面し、一気に恐怖に襲われていた。

 

記憶屋は明らかに自分の近くにいて、自分のことを見ているように思えた。

次に狙われるのは真希かもしれない。

ベンチに座って記憶屋を待っている真希が会ってしまうのは時間の問題だった。

 

 

 

記憶屋は遼一の近くにいる人間なのか?なぜオフ会メンバーの記憶は消されたのに自分の記憶は消されていないのか?

驚きの結末が気になる方はぜひ書籍を手に取って読んでみてくださいね↓↓

 

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記憶屋の感想や考察

記憶を消される、それだけ聞いたら恐ろしいことに聞こえるけれど、作品の中にもあったような犯罪被害者だったり、あまりにも辛い記憶は消してしまうのもアリなのかもしれない。

でも、遼一はあくまでも反対で、それも私はものすごく共感できる意見でした。

 

エピソード2で、大好きすぎる人が死んでしまったら、後を追ってしまうかもしれない七海という女性の話がありました。

確かに、大切な人を失った悲しみや苦しみがあまりに大きすぎると心を病んでしまうこともあるし、最悪の場合死を選ぶようなこともあるかもしれない。

でも記憶を消すってことは、その大切な人の存在をまるごと忘れてしまうということでもある。

悲しい記憶から解放されるかわりに、そもそもの出会いから、楽しく過ごした思い出も全部忘れてしまうということ。

 

もし、現実世界に記憶屋が本当に存在するとして、私だったらどうするかなぁとそれぞれのエピソードごとに考えて想像していました。

 

ちなみに、原作読んで号泣という感想もけっこうあるのですが、個人的には号泣って感じではなかったです(^-^;

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まとめ

今回は織守きょうやさんの「記憶屋」のあらすじネタバレと感想考察についてまとめました。

記憶屋は、自分のことが知られそうになるとその記憶を消して回ります。

それって、孤独との戦いなんですよね。

 

消された本人は、消された事自体忘れてしまっているわけなので、悲しいとか寂しいとかいう記憶はないんです。

遼一はずっと「消された側」の辛い感情を訴えて、記憶を消すべきではないと言ってきましたが、記憶屋本人が誰よりも消された側の辛さは知っている。

 

最後はそういうことがわかる切ないエンディングでした。

 

映画と原作は違う部分もあるので、原作を未読の方はぜひ読んでみてくださいね!

 

 

では、最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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