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作家生活35周年記念かつ書き下ろし作品ということで大注目の東野圭吾さんの「クスノキの番人」
今回の作品は、事件が起きたり人が死んだりということはなく、人と人のつながりを大切にした感動系作品です。
ですが、そこは東野圭吾さんですから、あちらこちらに伏線がありミステリー要素も忘れてはいません。
なので、一回読んだだけでは100%スッキリと理解することが難しい面もあるんですよね。
そこでこの記事では、「クスノキの番人」について
- 血縁関係がややこしい千舟と玲斗の関係
- 千舟の行動の謎(伏線)
- 玲斗が番人に選ばれた理由
について考察してみたいと思います。
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突然現れた伯母・千舟と玲斗の関係
窃盗の罪で逮捕された玲斗のところに突然やってきた弁護士は、伯母である千舟の依頼を受けていたわけですが、この千舟という人物。
少なくとも玲斗にとっては、それまでの人生でほとんど関わりがなかった人物なんですよね。
それもそのはず、一応血のつながりはあるものの、純粋な伯母ではありません。
相関図を作ってみましたのでご覧ください。
ずっと疎遠だった伯母が突然現れた理由、それは玲斗の逮捕がきっかけなわけですが、釈放させてやる代わりの条件が「クスノキの番人」をすることなんですよね。
そしてクスノキの番人は、柳澤家にとってものすごく大切な役目なんですよね。
それを、窃盗で逮捕されるような、仕事を転々としているような疎遠の甥に任せる??
千舟の狙いは何なのか?
このあたりが最初はとてももやもやしました。
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千舟の行動の謎と伏線
(思いっきりネタバレしていますので未読の方はご注意くださいね!)
千舟自身の秘密
千舟が隠していた秘密、それはアルツハイマー型認知症を患っているということでした。
このことは最後の最後に明らかになる事実ですが、それを思わせる伏線があちらこちらに出ています。
一番のポイントは「黄色い手帳」ですね。
千舟が肌身離さず持っており、しばしばこの手帳を開いて中を確認しています。
よほど大切なことか、内密な情報が書いてある….と思わせておいて、実際には、日々物忘れが激しくなっていく自分のための備忘録だったんですね。
プライドが高く弱みを見せない千舟らしい行動であり、一方で千舟の苦しみや葛藤も感じられとても切なくなりました。
他にも
- 玲斗の名前をうっかり忘れる
- 約束していた食事のことを忘れる
- 大切な会合があること自体忘れる
- 同じことを2度言う
などのシーンがありました。
その瞬間はいつも千舟はどうにか誤魔化してやり過ごしています。
読者の私も、正直全然気づかなかったです。
「表情が虚ろ」「視点が定まっていない」というような表現も何度か登場しますが、これもまさか認知症の症状を示唆する伏線だとは気づきませんでした。
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玲斗への罪滅ぼし
自分が元気でいられる期間が長くないと悟った千舟は、玲斗を後継者にするために実に様々なことを指導していきます。
- 箸の持ち方
- 言葉遣い
- ちょっとした仕草
- 姿勢
- 食事のマナー
等々、本来ならば親が言うような細かいことまで千舟は指摘しています。
こういった行動について、私は読みながら「そこまでする意味は何?」と思っていました。
子供の頃から可愛がっていて…とかじゃなく、これまでずっと疎遠だった甥に何年ぶりかに再会し、急にそこまでやるもの?そこまで感情移入できる?と。
さらに
- 柳澤グループの大切なパーティに連れて行く
- 柳澤グループの起点となった「ホテル柳澤」に連れて行く
といった、番人の仕事とは離れた場所にも玲斗を連れて行ったりしています。
実は、これらの行動はすべて、生前に一切助けてやらなかった異母妹とその息子への罪滅ぼしだったんですよね。
千舟と玲斗のシーンではたびたび、千舟が母親のことを訪ねる場面があります。
- 旅行は行ったのか
- どんな料理を作ってもらったか
- 母親の趣味はなんだったのか
父親の後妻が産んだ妹、複雑な気持ちはあったけれど、可愛いという想いもあったのに仲良くできなかったことや、苦労していることを知りながら手を差し伸べなかったこと、これらをずっと後悔していた千舟にとって、玲斗にあれこれ世話を焼くことは贖罪でもあったんですね。
なるほど、そういうことならば、罪を犯して警察に捕まるような出来の悪い甥でもどうにか一人前にしてやりたいという気持ちがあったのも納得できますよね。
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玲斗を番人に選んだ理由
しょーもない罪を犯して警察に捕まっていた玲斗。
これまでほとんど交流もなかった甥のために大金をはたいて釈放させ、さらに柳澤家にとって大変重要なクスノキの番人を任せることにした理由、それは
- 千舟にとって一番血の繋がりが濃いから
- 生前一切手を差し伸べなかった異母妹に対する贖罪の気持ちから
この2点だったんですね。
自分の引退後のことを考えた時、一番血縁関係が濃いのが玲斗だったわけですが、その玲斗はというと警察に捕まるような男。
普通なら「こりゃだめだ。とても任せられないわ」となって、それで終了~!となると思います。
ですが、千舟には異母妹への後悔の念がずっとあったわけで、むしろ千舟にとっては贖罪のチャンスでもあったんですよね。
多少出来が悪かろうが自分が面倒を見る、そんな親のような気持があったのでしょう。
なるほど~。
深いなぁ。
玲斗もこんな素敵な伯母と出会えて、これから先の人生間違いなく変わるでしょうね。
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まとめ
今回は、東野圭吾さんの「クスノキの番人」について、伏線や考察についてまとめました。
- 東野圭吾ワールドらしく、あちらこちらに伏線が散りばめられている
- 出来の悪い玲斗を番人に選んだ理由は、血の濃さと贖罪の気持ちから
正直、1回サラッと読んだだけでは細かい伏線は見落としてしまいますし、千舟の想いをしっかりと理解するのは難しいと思います。
すべての謎が解けてから改めて読み返すと、色々なことがわかってこの作品の深みが増すと感じました。
ぜひ2回は読んでみていただきたいなと思う作品です。
では、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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