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東野圭吾さんの不朽の名作と言われる『手紙』
東野圭吾作品には、謎解き要素が強いものと人間ドラマ要素が強いものがありますが、この『手紙』は100%人間ドラマものです。
謎解き要素は全くないので、ある意味とても読みやすいです。
そして映画とドラマ両方で映像化されており、いつものことながら、ものすごーーーーく考えさせられる作品です。
今回は東野圭吾さんの『手紙』について
- あらすじやネタバレ
- 感想や結末についての考察
を紹介していきます。
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Contents
【手紙】原作小説の簡単なあらすじ
両親を早くに亡くした剛志は、弟の直貴を大学へ行かせてやりたい一心で資産家女性の家に強盗目的で侵入する。
しかし不在だと思っていた家主と鉢合わせし、勢い余って家主の女性を殺してしまう。
この瞬間から、直貴は「強盗殺人犯の弟」として差別される人生を送ることになる。
大学進学、将来の夢、大好きな女性との結婚など多くのものを何度も何度も失い直貴は絶望していた。
一方、刑務所の剛志からは毎月かかさず「手紙」が届いた。
次第に返事を書かなくなっていく直貴だったが、そんな直貴の気持ちに気づかない剛志からの定期便は続く。
自分のために殺人を犯した兄と、その兄の罪によって犯罪加害者家族となってしまった弟。
誰もが他人事ではない、犯罪加害者家族に対する偏見や差別について真正面から描かれた名作。
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【手紙】原作小説のあらすじネタバレ
ここからはネタバレを含む詳しいあらすじを紹介していきますので、未読の方はご注意くださいね。
兄・剛志の犯罪
両親を早くに亡くした剛志と直貴兄弟は、剛志の稼ぎによってどうにかその日を食いつなぐ生活を送っていた。
剛志は、弟の直貴をどうしても大学に行かせてやりたかったが、とてもそこまでの金銭的余裕はなく、思い詰めた剛志は資産家女性の家に強盗目的で侵入することを決める。
以前引っ越しのアルバイトでその女性宅に行ったことがあり、裕福で一人暮らしであるということからその家を狙った。
しかし、不在だと思って侵入したにも関わらず、家主の女性と鉢合わせてしまい、焦った剛志は持っていたドライバーで女性を刺し殺してしまった。
女性には何の恨みもなかった。
殺すつもりはなかった、それは何の言い訳にもならない現実…。いつもそうなのだけど、東野圭吾作品はこういう殺人シーンなどが本当にリアルで読みながらハラハラドキドキします。
最初の苦難
警察からの連絡で兄の逮捕を知り、ワイドショーで事件の詳細や動機を知った直貴。
事件の一週間後から再び高校には通い始めたが、同級生からあからさまな嫌がらせなどはされなかったものの、教頭や学年主任からは遠回しに中退を勧められる。
担任の梅村教諭だけは、直貴のことを本気で心配し応援してくれていた。
さらに、兄と二人で住んでいたアパートの管理人からは退去するように迫られる。
直貴は、これからどうしたらいいのかと途方に暮れながら、兄が事件を犯した資産家女性の家を見に行った。
そして、今まで自分のことばかり考えていたが、一番の被害者は殺された老婦人であり、自分は兄に代わって遺族に謝罪すべきではないかと思い至る。
偶然にも家から遺族と思われる人物が出てきたが、直貴は立ち止まることができず素通りしてしまった。
遺族への謝罪、高校生にはあまりにも大きな試練だと思う。
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レストランでのアルバイト
今日はいかにして腹を満たすか、そのことばかり考えていた直貴は高校に通いながら働ける場所を探していた。
しかし身内を欄を空欄にすると不審がられ、本当のことを言うと追い返された。
担任の梅村教諭の紹介で、卒業までという条件付きながらレストランで働けることになった。
ただし、兄のことは隠しておく、ということが梅村との約束だった。
両親を突然亡くしたと聞かされている店長は、直貴にとても良くしてくれた。
久しぶりに楽しいという感情を味わっていた直貴だったが、卒業も迫った2月、受験がわ終わって浮かれたクラスメイト達が直貴のバイト先にやってきた。
酒も入り羽目を外しすぎた彼らの口から、「直貴の兄が殺人犯である」という事実が店長とその場にいた他の客にも知られるところとなってしまった。
もともと3月末までの勤務の約束だったが、直貴は空気を読んで早めの退職を申し出た。店長からは引き留められなかった。
そんな時、剛志から初めての手紙が届いた。
手紙には、頼みたいことや聞きたいことがあるから面会に来て欲しい、そう書いてあった。
この店長、悪い人ではないしレストランオーナーという立場でよく解雇にしなかったと思う。でも、何も悪くない直貴が不憫でならない。
リサイクル工場勤務
三月末、梅村教諭が探してきてくれたリサイクル会社への就職が決まったが、毎日お腹いっぱい食べられる生活にはほど遠かった。
兄からの手紙は毎月かかさず届いており、直貴も返事を書いて自分の近況を伝えていた。
この頃、毎朝の通勤バスで一緒になる由実子という女性から、直貴は一方的なアプローチを受けるようになる。
しかし直貴は由実子が好みではなかったし、自分の境遇を考えるととても恋愛などするような気持ちにはなれず、由実子のことを避けるようになっていた。
由実子はなぜ直貴に近づいてきたのか?私は文面からは単なる恋愛感情ではないような印象を受けたのだけど、どうだろう?
大学進学への希望
ある時、同じ寮の季節労働者たちに誘われ、断り切れず一緒に酒を飲むことになった。
早々に部屋に帰ろうとした時、ポケットに入れてあった兄からの手紙を抜き取られた。
差出人住所を見た倉田という男が、刑務所からの手紙だと気づき、差出人が兄であることや犯した罪の内容を聞くと、剛志のことを罵り始めた。
カッとなった直貴は、倉田に殴りかかってしまった。
このことで謹慎を受けてしまった直貴だが、倉田とは腹を割って話せる仲になった。
実は倉田も前科者であり、妻と子供がいると言った。
そして、働きながら大検取得を目指しているのだと。
その後倉田とはなかなか会えないまま、契約期間が終了したことで倉田は寮を去ってしまった。
しかし倉田は直貴のために、自分が使っていた参考書を置いていったのだ。
大学の通信教育部のパンフレットとともに…
完全に諦めていた大学進学の夢を、思わぬ形で取り戻した直貴。無事にその夢を追えるといいのだけど…
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バンド活動
通信教育部には問題なく合格することができた。
相変わらず由実子からのアプローチは続いていた。
迷惑とすら感じていた直貴は兄が服役中であることを由実子に告げ、距離を取ろうとした。
通信教育部は基本的に在宅学習だが、週に何度か夜間に大学へ行き実際の講義を受ける必要があった。
この夜間講義で知り合った寺尾に、なかば無理やり連れて行かれたカラオケボックスで、バンドを一緒にやらないかという誘いを受ける。
直貴には全く自覚がなかったが、彼には歌の才能があったのだ。
由実子から年賀状が来たけど、どうやって住所を知ったのか。やっぱり何か只者ではない気がするのだけど…
プロを目指す
バンドに本格的に誘われた時、自分はそんなことをしている場合ではないという気持ちが強く、参加は断った。
それでも誘ってくれる友人たちには本当のことを言った方がいい、そう決心し、兄のことを告げる。
友人たちは、直貴の境遇についてバンドとは無関係だと言い切り、直貴は晴れてバンドメンバーとなった。
ライブの成功を重ねながら、直貴はバンド活動にどんどんのめり込み、もはや大学を辞めてバンド一本でも良いと思うほど本気でプロを目指し活動していた。
そしてついに業界大手のレーベルの目に留まり、プロデビューが現実のものとなりつつあった。
直貴はバンド活動をしていることや、プロを目指していることなどは兄への手紙には書いていなかった。
ある日、寺尾を除くメンバー3人が直貴の寮を訪ねてきた。
3人の口から出た言葉は、バンド活動から手を引いて欲しいというものだった。
プロデビュー目前となり、レーベル側がメンバーのことを調査したというのだ。
またしても兄のことがネックとなり、直貴は自らバンドから抜けることを決めた。
本当の事情を知らされていない寺尾には、「学業に専念したい」と嘘をついた。
直貴は何も悪くない。でも、芸能界デビューのハードルは高すぎる。大人なら誰もが思うこと。
合コンでの出会い
バンドのことがあってから、直貴は兄に手紙を書かなくなっていたが、剛志からは毎月かかさず手紙が届いた。
能天気な内容の文面を読むことを苦痛に感じ始めていた。
直貴は通信教育部から昼の通学過程に移り、昼間は普通の大学生と同じように講義を受け、夜にはバーで働く生活を送っていた。
バーのマスターには兄のことは言わなかった。
ここで働くようになり、直貴はどうやら自分はいわゆる「モテるタイプ」であるということを自覚する。
このバーにも由実子は現れた。
久々に会った由実子は驚くほど垢抜けて美しくなっていた。
ある日、大学で合コンに誘われた。
誘って来た男子学生は、男前を連れてこいと言われて直貴を誘ったという趣旨のことを説明した。
直貴は冷めた気持ちで、生まれて初めて合コンに参加したが、女性側の参加者である朝美という女性に惹かれてしまった。
何度かデートを繰り返し恋人同士となった二人だったが、しばらくして朝美から「両親に会って欲しい」と頼まれる。
朝美に本気で惚れていた直貴は、この局面をどう乗り切るか考えた結果、兄のことは一生隠し通すしかないという結論に達する。
またしても直貴は全く悪くないのだけど、隠し通したまま結婚できると思っているのか、またそれが最良の方法だと思っているのか、そのあたりは考えが浅はかだなぁと思っちゃう(>_<)
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別れ
兄からの手紙は、読み終わるとすぐにびりびりに破って捨てるようになっていた。もちろん返事ももうずっと書いていない。
朝美の自宅は高級住宅街にあり、塀に囲まれた大きな家だった。
朝美の両親との対面は、非常に厳しいものだった。
あからさまな敵意を向けてくる父親と、にこにこしながら威圧し遠回しに嫌がらせをしてくる母親、そしてなぜかそのタイミングで現れる朝美の従兄弟。
この従兄弟は親が決めた朝美の結婚相手だった。
兄の事を伏せた状態であの態度なのだから、朝美と結婚することはまず無理だと直貴は悟った。
そこに、バーの客として飲みに来ていた由実子が言う。
「既成事実を作ってしまえばいい」と。
ほどなくして、朝美のフィアンセが直貴のことを嗅ぎまわっていることが耳に入り、兄のことがバレるのも時間の問題だった。
ますます由実子の言う既成事実作戦しかないような気がしてしまい、ついに直貴は朝美を自分の部屋に呼び出す。
その時、朝美の従兄弟が直貴の部屋にやってきて、たった今届いたから代わりに受け取ったという郵便物を朝美に見せる。
それは検閲印が入った兄からの手紙だった。
朝美に秘密がバレてしまい、一人残された直貴のもとに、しばらくして朝美の父親が訪ねてくる。
先日の威圧的な態度とは打って変わり、娘と別れて欲しいと頭を下げ手切れ金を渡した。
直貴はお金は受け取らなかったが、朝美とは別れることを決めた。
何度もこういう経験を繰り返してきたせいで朝美と別れることになった時も投げやりだった。そりゃそうなるよね。
就職活動
直貴は就職活動に精を出していたが、家族がいない(兄はアメリカで音楽活動中ということにした)ことがどうしてもネックになり、なかなか仕事は決まらなかった。
直貴は、兄との繋がりを絶とうと考え、住所を変えた。
兄には新しい住所は教えなかった。
にも関わらず兄からの手紙が届いた。
兄は、直貴の高校時代の恩師の梅村教諭に連絡を取り新住所を知ったのだった。
避けているということがなぜ兄には伝わらないのか、直貴は腹が立って仕方がなかった。
でも、自ら絶縁状を送り付ける勇気はなかった。
苦戦した就職活動だったが、直貴がようやくつかみ取った就職先は、大手家電量販店だった
ある日、またしても兄から手紙が届いた。
最近は読まずに捨てるようになっていた手紙を、この時はたまたま開いた。
文面から、由実子が直貴の名前を語って兄に手紙を送ったとすぐにわかった。
由実子の真意がよくわからない。誰よりも直貴のことを知っているはずで、兄と縁を切りたい気持ちも誰よりもわかっているはずなのに。
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異動
パソコン売り場の配属になった直貴は、誰よりも勉強し知識を入れ、先輩の接客を見て学び、三か月後には「できるヤツ」だと思われるようになっていた。
再び引っ越した直貴は、会社以外の誰にも住所は教えず、今度こそ兄からの手紙も届かなくなっていた。
ある日、勤務先の量販店で盗難事件が起きた。
被害総額が大きく、警察が出動し大騒ぎになった。
この事件自体は直貴には全くの無関係だったが、犯人が元従業員であったことから、会社が全従業員の身辺調査を行うこととなり、それをきっかけに兄のことが会社に知られることとなってしまった。
事件後しばらくして、直貴は異動を命じられた。
異動先は、いわゆる倉庫番だった。
犯罪加害者家族というのはここまで過酷な境遇に置かれるのですね。本当に不憫でならない。
社長の言葉
直貴が倉庫で勤務していると、突然社長の平野が訪ねてきた。
平野は「今回の異動は不当だと思うか」と直貴に問うた。
直貴は社長を前に言葉に詰まったが、平野は語り続けた。
- 犯罪加害者の家族が世間から差別されることは当然である
- 誰もが犯罪とできるだけ距離を持ちたいと思うのは自然な感情である
- 犯罪者は、自分が刑務所に入れば良いというものではなく、家族を苦しめることまで含めて罪であることを自覚すべき
直貴がこれまで経験してきた辛い出来事も含めて、すべては兄の罪であり、不当な扱いを受けたとしてもその怒りは差別した相手に向けるものではない。
直貴は、自分が受けてきたこれまでの経験を正当化する意見を初めて聞き、驚きを隠せなかった。
平野は、差別は当然と持論を展開した上で、「ここから始めれば良い」と直貴を叱咤激励した。
そして最後に、なぜ今日直貴に会いにきたのかを伝えた。
自分宛に、直貴を救ってやって欲しいという内容の手紙が届いたからだというのだ。
直貴はそれを聞き、差出人が誰かすぐにわかった。
直貴が人事異動の辞令を受け取ったことを知っている人物はたった一人しかいない。すごい行動力だわ。
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結婚生活
社長へ手紙を書いたのは由美子だと確信し、直貴は由美子に会いに行く。
家に着くと由美子は不在だったが、たまたま目についた郵便受けに見慣れた手紙が差し込まれていることに気づく。
宛名は直貴、差出人は兄・剛志だった。
なぜここに兄からの手紙があるのか…?
由美子が自分の名を語ってずっと剛志と手紙のやり取りを続けていたことを知った直貴は、由美子を責めた。
しかし、その時に社長の平野と話した内容が頭をよぎったのだ。
由美子を責めるのは筋違い、自分がずっと逃げてきたのだと思った。
由美子はこの時初めて自分の生い立ちを語り、直貴には逃げて欲しくないのだと強く訴えた。
~~数年後~~
二人の間には娘が生まれていた。
結婚後もずっと兄と文通を続けていたのは由実子だった。
家族は社宅に移り、穏やかな日々を過ごしていた。
ある時、直貴の兄のことを知る昔の同僚が社宅に越してきたことをきっかけに、家族は再び「差別」を受けるようになってしまう。
直貴も由実子も「逃げたくない」「娘にコンプレックスを持たせたくない」そういう気持ちで向き合ってきたが、娘が保育所でも辛い思いをしているという事実に頭を悩ませていた。
直貴にも由実子も何も悪くない。でも、娘はもっともっと全く何の関係もないのに差別される現実。夫婦はどういう結論を出すのだろう。
社長との再会
社長の平野と再会する機会が訪れた。
数年前の平野の言葉を真摯に受け止め自分は頑張ってきたつもりだが、娘が差別を受けているのが辛い、という今の気持ちを直貴は語った。
平野からは予想もしていない返答があった。
娘が差別を受けるのもまた当然である。誰が犯罪加害者家族と親しくしたいと思うのか?「正々堂々」というのが夫婦のキーワードのようだが、それは君たちにとって本当に苦渋の決断なのか?楽な道を選んでいるのではないか?
正々堂々の何がいけないのか、その質問には平野は答えてくれなかった。
社長の言葉は、いちいち重い。直貴にとっては間違いなく人生を変えてくれる人になるのだろうと思う。
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直貴の決意
社長の言葉の意味を考えながら持ち場に戻ろうとしていた直貴のもとに、由美子と娘がひったくりに遭い、自転車ごと倒され怪我をしたと連絡が入った。
病院に駆けつけると、娘が意識不明で集中治療室に入っていた。
まもなく娘の意識は回復し、脳波も異常はなかったが、額に傷跡が残ると告げられ直貴は犯人に対し憤りを感じた。
数日後犯人は逮捕されたが、直貴たちには何もできることはなかった。
そんなある夜、犯人の両親が直貴宅に謝罪に訪れた。
彼らは終始平身低頭で、心からの誠意を感じられたが、だからと言って犯人を許せるはずもなく、直貴は複雑な気持ちだった。
このことを兄の事件と重ね合わせて考えた直貴は、「自分たちが本当に取るべき苦しい道が何なのか」ということを悟ったのだった。
彼らが取るべき一番苦しい道…私は読みながら早々に気づいていたけど、当事者だったら無理かもしれない。
数年ぶりの手紙
直貴は数年ぶりに兄に宛てて直筆の手紙を書いた。
それは絶縁状だった。
兄の犯罪によって自分は犯罪加害者家族となり、これまで幾度となく辛い経験をしてきたこと。
家庭を持ち、妻と娘を守るためには兄と縁を切るしかないと思い至ったこと。
家族の苦しみまで含めて罪であり、そのことをもっと早く伝えるべきだったこと。
今後出所しても自分たちには一切接触してこないで欲しいこと。
この手紙を投函したあと、直貴は会社に辞職願を出した。
小説を読んでいるだけの読者は、なぜもっと早くそうしなかったんだと思う人、多いだろうなと思う。私もその一人。
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遺族への面会
ひったくり犯の両親からの謝罪の手紙が続くことに対し、直貴は「忘れたいのになぜ送ってくるのか」と思ったが、一方で由美子は「何もしないよりいい」と言った。
直貴は事件後初めて、兄が殺した女性の遺族に謝罪に訪れることを決心した。
女性の息子からは、線香をあげることも手土産を受け取ることも拒否されたが、代わりに見せられたのが、兄からの手紙だった。
剛志はこれまでずっと、毎月かかさず遺族に謝罪の手紙を送り続けていたのだった。
そのうちに一通を読むように言われ直貴が読んでみると、そこには
- 弟から絶縁状が届いたこと
- これまで弟は殺人犯の家族として過酷な生活を強いられてきたこと
- そしてそのことに自分は全く気付いていなかったこと
- 自分からの謝罪の手紙すら遺族にとっては不快極まりないということに気づいたこと
これらのことが書かれており、自分からはもう二度と手紙は書かないと結ばれていた。
女性の息子は「もう終わりにしよう」と直貴に言った。
この手紙を読んでいる直貴の心情を想像すると涙が止まらなくなります。
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【手紙】原作小説の感想と結末の考察
「手紙」はエンディングが印象的な作品です。
東野圭吾さんの作品は、謎解きもの、人間ドラマもの、どちらの作品でも比較的エンディングはスッキリする終わり方というか、例えバッドエンドであったとしても、少なくとも「え?どういうこと!?」みたいな終わり方をする作品はほとんどないんですよね。
しかし!この手紙はめずらしく「え!!?どういうこと!」という終わり方をします。
直貴は遺族へ謝罪に訪れた後、元バンド仲間の寺尾の誘いで千葉刑務所での慰問コンサートに参加することを決めます。
兄とは縁を切ろうと決め、絶縁状を送って住所も職場も変えた直貴でしたが、遺族から見せられた最後の手紙で心動かされたのかもしれませんね。
尋常ではない緊張感の中、ピアノ伴奏の寺尾に合わせて歌いだそうとした瞬間ーーー
直貴は兄と目が合った。
その瞬間、直貴は全身がしびれたようになり、声が出なくなった。
ーーーEND---
これで終わりです。
この後、歌えたのか歌えないまま舞台を下りたのか、それが書かれていません。
「え!?終わり!?」と思わず声に出ちゃいますよね。
当たり前のことですが、東野圭吾さんはあえてここから先を書かなかったわけで、読者に想像させようとしたのでしょうね。
ということは、読者によって考えることは様々ですから
- 一瞬声が出なくなったけど、持ち直して立派に歌い切った
- どうしても歌えなかったので代わりに寺尾が歌った
- 舞台の上で終始号泣して終わった
どれでもアリってことですよね。
でも、どれでもアリとはいえ、私は個人的には「代わりに寺尾が歌った」なんてパターンは嫌ですよね、さすがに(>_<)
東野圭吾さんが読者の想像に任せるとおっしゃるのならば!私はやはり「立派に歌った」と信じたいと思います。
そしてこの時だけは二人の心がつながり、でもこの時を最後に二人はもう二度と会うことはないのだと思います。
それが、直貴が選んだ道であり、剛志の罪の重さなんです。
今回の「手紙」という作品、色々なことを考えさせられる重苦しい作品でした。
「差別はあって当たり前」という社長の持論。
これは「差別はいけない」「人類みな平等」のように教えられて育った現代人にとっては衝撃的な意見です。
でも、ものすごく的を得ていて、考えさせられますね。
人物の心理描写が秀逸で感情移入してしまう東野圭吾さんの「手紙」はこちらから購入できます↓↓
【手紙】原作小説の口コミを紹介
「手紙」が発売されてから15年以上経ちますが、時代に流されない名作はいつまでも読者が絶えませんよね。
いくつか口コミを紹介します。
東野圭吾の手紙を読んで泣いた。後悔しても取り返しのつかないことってある。それをやり直せる社会にできるのかな。私自身色んな偏見や差別を心の底からまっさらに受け容れられるかと問われたら即答できない。#東野圭吾 #読書感想
— sheepsheep (@qiaoben_ai) November 9, 2019
作中の社長の言葉「差別されるのは当たり前」が本当に重い。
4時間程かけて一気読みしてしまった 可哀想とか偽善では済ますことのできない、なんとも重い話だった
手紙 / 東野圭吾— ナツ子 (@yat_msi) November 8, 2019
同感です。可哀想、そんな言葉では済ませられない。
東野圭吾さんの手紙っていう本を読んでから、ニュースで報道される殺人系の話を聞いたとき、被害者側だけじゃなく加害者側の心境も考えるようになってしまうようになった
加害者側が悪いのは間違いないんだけど、意図しないものだった時のやるせなさが酷い— あぽろ°趣味垢 (@apopopooon_0205) November 5, 2019
小説がきっかけで新しい視点が生まれるというのは、作者の東野圭吾さんにとってこれ以上なく嬉しいことなんじゃないかと思います。
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まとめ
今回は東野圭吾さんの名作「手紙」のあらすじをネタバレを含めて紹介しました。
さすが名作と言われるだけのことはあり、発売から15年以上経っても全く時代に流されることなく人の心を揺さぶりますね。
犯罪には誰しも近づきたくない、当然の気持ちです。
同様に、犯罪加害者はもちろん犯罪加害者家族にだってなりたくはありません。
加害者家族は本人には何の罪もないわけで、誰だってなりたくてなるわけじゃないのだから、そういう人がもし身近にいたら優しくしてあげなければいけない、その気持ちがすでに差別なのだという社長の言葉は重いです。
この作品は、多くの名作がある東野圭吾シリーズの中でも特にオススメしたい一冊です。
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