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長岡弘樹さんの『教場』
この小説を読んだ時の衝撃、「え、ヤバくない?警察学校こんななの??」という感想が忘れられません。
警察学校が舞台という珍しい設定と、内容のショッキングさも相まって大人気シリーズとして有名ですよね。
2020年お正月のスペシャルドラマとして木村拓哉さん主演でドラマ化されたこともあり、一気に知名度も上がりました。
この記事では、そんな長岡弘樹さんの『教場』についてあらすじやネタバレを紹介していきます。
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Contents
教場の簡単なあらすじ
さまざまな経歴を持つ生徒が共同生活を送りながら警察官を目指す警察学校。
ここでは、普通の学校で言う「教室」のことを「教場」と呼んでいた。
病気休養となった教官の代わりにやってきた風間は、モラハラ、パワハラ、体罰などが当たり前に行われる警察学校において大声を出すことも手をあげることもなく、いつでも冷静沈着、無表情、何を考えているのかわからない教官だった。
生徒たちは、無事に警察学校を卒業するべく、自らの保身のために時に友人を裏切り、争いながら卒業を目指す。
風間はその鋭い観察力と洞察力で生徒たちのすべてを見透かし、トラブルや事件を未然に防ぎながらも「一人でも多くの生徒を警察官にする」のではなく、「不適合者をふるい落とす」ために厳しい指導を行っていく。
6つの短編連作から成る警察学校の物語。
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教場の詳しいあらすじとネタバレ
ここからはネタバレを含む詳しいあらすじを紹介していきますので、未読の方は注意してくださいね。
第一話 職質
担任の植松はモラハラ、パワハラ、暴力が当たり前の鬼教官だった。
しかし、体調不良で担任から降りることになり、代わりに来たのは風間という白髪で義眼の男だった。
生徒の一人、宮坂は同期の平田に対し恩があり、平田があまり出来が良くないことに気を遣って自分も出来が悪いフリをしていた。
しかし、出来が悪いふりをしていることを風間に見抜かれ、風間から逆にスパイに任命される。
「どんな細かいことでもいいから毎日報告するように」という命令を受けた宮坂は、
- ある休日の外出時に、 同僚の一人が硫黄入りの入浴剤を持ち帰っていたということ
- トイレ掃除用の洗剤が一本なくなっているということ
を報告した。
その話を聞いた風間は、一見関係のない2件の出来事を結びつけ、生徒の誰かが硫化水素自殺を図っているものがいるのではないかと予想する。
風間は学生たちに「グラウンド25周」という命令を下し、その間に各部屋をガサ入れし、 硫化水素自殺を図ろうとしていた生徒を探した。
そんな風間の意図を知る由もない生徒たちは、ランニングからヘトヘトになって戻った。
その時、宮坂は平田から「明日の授業の逮捕術の予習に付き合ってほしい」と頼まれ、 平田の部屋に行く。
するとそこで宮坂は平田に手錠をかけられてしまう。
わけがわからない宮坂を前に、平田はドアの隙間にガムテープで目張りし、入浴剤とトイレ洗剤を持ち出した。
警察官の父親を持つ平田にとって、警察学校で常に劣等生であることは最大のストレスであり、さらに宮坂がいちいち自分のフォローに回ることを屈辱的に感じていたのだ。
逃げ場のない平田は、恨みを持つ宮坂とともに硫化水素自殺を図ろうとしていた。
平田が今まさに入浴剤とトイレ用洗剤を混合しようという時、ドアの向こうから風間が声をかけた。
風間は止めるどころか、できるものならやってみろと平田を挑発した。
実はガサ入れの時に、 風間はトイレ用洗剤をただの水に入れ替えていたのだ。
そんなことは知らず、平田は心中を図り、宮坂は死ぬ思いをした。
今回の騒動後、 平田はひそかに警察学校を去ったが、本当はどのような理由で去ったかということは一部の人間しか知らなかった。
第二話 牢問
インテリアコーディネーターの仕事を辞めて警察学校に入った楠本忍。
忍は警察学校の中でも優秀な方だったが、実は隠れて同期の岸川沙織に脅迫状を出しているという裏の顔があった。
沙織はそのことでストレスを抱えており悩んでいたが、忍は表向き沙織の味方のような顔をして接していた。
忍が沙織に対して脅迫状を出していたのは、自分の恋人をひき殺した犯人だと思っていたからだった。
忍は過去に恋人を交通事故で失っており、その犯人がまだ捕まっていなかった。
警察学校に入校後、たまたま知った情報から、沙織こそが自分の恋人を引き殺した犯人だということを確信した。
脅迫状はもちろん匿名で、足が付かないように工夫して出していたにも関わらず、ある時風間に呼び出されてあっさりとバレてしまう。
ある日忍が当番でパトカーのワックスがけをしていた時、急に立体駐車場の操作盤が触られ、機械と機械の間に太ももを挟まれてしまった。
そのまま気を失ってしまった忍は、数時間後に目を覚ますとどうにか自分の携帯電話を手繰り寄せて事務室に電話をかける。
風間に場所を伝えると、やってきたのは風間ではなく宮坂だった。
宮坂は風間に指示された通りにしか動かず、忍のことを助ける気配も見せなかった。
風間は電話越しに、忍になぜ沙織に脅迫状を出しているのか、二人の間に何があったのかという事を問い詰める。
忍は理由を説明し、その根拠も話した。
しかし、その時宮坂が差し出した写真を見て愕然とする。
その写真は、忍が間違いないと確信を持っていた根拠を完全に覆してしまうものだった。
沙織は脅迫状の差出人を忍と確信し、友人のような顔をして裏切っていた忍を襲ったのだった。
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第三話 蟻穴
白バイ隊員を目指す鳥羽は、音を聞くだけで走っている乗り物の速度を当てるという特殊な特技があった。
水難救助訓練の時、鳥羽と稲辺の2人はちょっとした私語をしてしまい、教官からの罰として水の中で大変苦しい思いをさせられる。
ある時、稲辺は教官に呼び出され、八つ当たりの体罰を受けようとしていた。
原因はこの教官よりも剣道がうまかったからという理由だったが、そのことにより、ルールを破って外出をしたと言いがかりをつけられていた。
稲辺は自分が外出していない証拠に、その時間に鳥羽の姿を見たと証言したが、鳥羽は「自分は知らない」と嘘をついてしまった。
それにより、稲辺は教官から体罰を受け、全身傷だらけになってしまった。
ある日鳥羽は風間に呼び出される。
警察学校では、その日にあった出来事を毎日日記に残すように言われていたが、その内容から「耳が悪いのではないか」と指摘される。
鳥羽は、先日の水難救助訓練の時に耳抜きをせずに急激に潜ったことにより、滲出性中耳炎を発症してしまっていた。
しかし白バイ隊員になるという目標のため、自分の耳に異常はないということを必死でアピールする中で、日記に事実と違うことを書いてしまったのだ。
毎日の日記では、「絶対に事実のみしか書いてはならない。想像や創作は即クビ」という厳しいルールがあったので、鳥羽は自分が書いてしまった嘘の記述を隠蔽するために、教官から稲辺のアリバイを尋ねられた時に「自分は姿を見ていない」という証言するしかなかった。
風間から、虚偽の記載に関しては目をつぶる代わりに、明日中に稲辺に謝罪するように命じた。
鳥羽は本当に謝罪しようと思っていたのだが、ちょうど稲辺に呼び出されて射撃場へ向かうと、なぜかヘッドプロテクターをはめられる。
このヘッドプロテクターには瞬間接着剤が付けられており、耳の周りにぴったりとくっついてしまっていた。
さらにその内側には蟻が仕込まれており、蟻は鳥羽の鼓膜へと向かって進んでいった。
第四話 調達
日下部は元プロボクサーで、警察学校の同期内では最年長の30歳だった。
年齢的な体力の衰えや学科面で他の同期たちから差をつけられており、日下部は生き残る術として、同期たちの違反行為を密告することで教官らの点数を稼いでいた。
樫村は同期の間で「調達屋」として知られていた。
とにかくネットワークが広く色々なものを調達してくることができた。
日下部はある時、樫村に対し調達屋としての行為を指摘する。
樫村は、このことを黙っていてくれれば、劣等生である日下部が欲しがっている学科の点数も欲しかったので、樫村の提案に応じ、次の授業の内容を先に知ることに成功する。
ある日民家で不審死があったという設定で臨場した場合、どういったことに注意をするか、何を見るかと言った授業があったこの時、日下部は我先にと前に出てすらすらと教官の出す問題に答えてみせた。
しかしそのことが裏目に出てしまう。
先日、この模擬民家でボヤ騒ぎがあり、犯人がなかなか捕まらないため日に日に締め付けがきつくなってきていた中で、あまりに質問にスラスラと答える日下部は、すっかりこのボヤ騒ぎの犯人ということになってしまった。
普段からの密告の件もあり、同期たちの怒りは日下部に一気に向かい、リンチまがいの扱いをうけるようにもなった。
そして日下部は、自分が樫村にはめられたことを知った。
しばらくして、再び練習交番での勤務の日、日下部は樫村と組むことになった。
憂鬱な気持ちのまま向かうと、そこには風間がいた。
風間は、実際の交番勤務についての講義をしながらも、徐々に本題に近づいて言った。
模擬家屋でボヤ騒ぎを起こしたのは、寮兄の尾崎だという。
尾崎は覚せい剤所持違反で逮捕。
樫村は尾崎に金で雇われ、「無罪」を調達したのだった。
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第五話 異物
由良は、体格に恵まれ、運転技術にも長けている非常に優秀な学生だったが、どうしても苦手なものが一つあった。
それは、スズメバチ。
かつて刺されて大変な思いをしたことがあり、もう一度刺されるとアナフィラキシーショックを起こすかもしれないという恐怖から、異常にスズメバチに対する恐怖感が強かった。
スズメバチは黒いものによってくるということから、由良は定期的に髪の毛を極限まで短くカットして坊主頭をキープするという徹底ぶりだった。
ある時、由良は安岡と二人で当番に当たっており、次の授業の準備をしなければならなかったが、髪の毛をカットすることを優先し、安岡一人に授業の準備を押し付けた。
いざ授業が始まると、今日の当番ということから由良がパトカーに乗って車を走らせてみるように指示される。
運転中ふと気づくと、車内にスズメバチが紛れ込んでいることに気づき、由良はパニックに陥る。
そして運転操作を誤り、安岡の方に突っ込んでいきそうになったところを風間が身を挺して安岡をかばい、代わりに大怪我をするという惨事になってしまった。
由良は、授業の準備を押し付けた仕返しに安岡にスズメバチを仕込まれたと思い込んでいた。
風間から呼び出され、突然機動隊の格好するように言われる。
そのまま連れていかれたところは、スズメバチの巣があるところで、スズメバチの駆除をしてみるように言われる。
そしてその時に、スズメバチはヘアスプレーや整髪料に集まってくるということを風間に教わる。
それによって、あの時車の中にスズメバチがいたのは安岡の仕業でもなんでもなく、その直前に乗っていた教官の整髪料のせいだということにも気づかされる。
後日、由良は再び安岡とペアになることがあり、スズメバチの件で安岡を疑っていたことを謝罪したのだった。
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第六話 背水
第98期生たちの卒業の時期が迫ってきた。
集大成として、文集を書くことになっていたが、都築は同期から押し付けられて文集係をやらされる羽目になった。
都築は少し前から体調を崩しており、そのことを懸命に隠しているつもりだったが実は風間にはお見通しだった。
風間いわく、都築の体調不良は卒業を間近にしたプレッシャーからくるものであり、それは文集を読めばわかるという。
都築は警察学校内において大変な優等生で、そのために死ぬような思いをして過ごした経験がなかった。
それが逆に現場に出る時へのプレッシャーとなっているのだった。
そのことを指摘された都築は、文集に未来のことを書いた。
- 拳銃試験で一位をとること
- 職務質問コンクールで優勝すること
このことを、試験もコンクールも行われる前に「目標ではなく事実として」書いた。
警察学校内において、日記や文集といった文章に少しでも事実と異なることを書くと、退校処分に相当する罰を受ける。
都築はまだ見ぬ未来のことを事実として先に文集に書き、退校処分を賭けて自分の事を追い込んだ。
風間はそのことも全てお見通しだった。
そして実際にコンクール1位を取った都築は見事、警察学校を卒業していった。
エピローグ
風間は第九十八期生を見送ったあと、半年間の準備期間を経て、再び第百期生の担任となっていた。
今日入校してきたばかりの学生たちは完全に浮き足立っており、警察官への憧れを胸に抱き湧き上がっていた。
それを牽制する意味で、風間は自分の義眼を生徒たちの前でぼろりと取って見せた。
現場に出れば様々な武器を持った犯人と対峙することになり、自分はこれを千枚通しのような凶器でやられたと言った。
浮き足立っていた学生たちが一気に静まり返る中、風間は新たな生徒たちを前に微笑んだ。
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まとめ
今回は長岡弘樹さんの「教場」のあらすじネタバレを紹介しました。
初めて読んだ時の衝撃は忘れられないですね。
小説なので脚色されているところはあるかと思いますが、それにしても怖すぎる!厳しすぎる!と思いました。
警察学校というところは一般人には全く未知の世界なので、本当にこういうところなのかな?と思ってしまいます。
そういった衝撃もありましたが、純粋に読み物としてもとても面白かったですので、
まだ未読の方はぜひ読んでみてくださいね!
では、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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