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伊坂幸太郎さんの『グラスホッパー』は
2004年に発売され、読んだことなくてもタイトルくらい聞いたことある、というレベルの有名作品です。
私はこちらの作品、まさか殺し屋の話だとは思わずに読み始め、しばらくは怖すぎる!と思いながら読み進めて行きましたが、気づけば引き込まれて止まらなくなるという状況に陥っていました。
抽象的な表現があったり伏線があったりと、一度読んだだけでは理解しきれない部分もあるかもしれませんが、独特な世界に病みつきになる方が多いのもよくわかります。
今回は、そんな奥が深いグラスホッパーについて、あらすじをネタバレを含めてラストまで!紹介したいと思います。
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Contents
グラスホッパーの簡単なあらすじ
妻を無惨な事故で亡くした元教師の鈴木は、復讐を目的に「フロイライン」というヤバイ会社に潜入する。
復讐相手だった寺原は目の前で「押し屋」に殺されて死んでしまったが、幹部の指示でとっさに後を追った鈴木は押し屋に家族がいることを知ってしまう。
押し屋の存在をフロイラインに報告すれば、間違いなく一家皆殺しになってしまうためどうにか逃がしたいと考える鈴木。
一方、自殺を専門とする自殺屋の鯨、ナイフ使いの殺し屋蝉はともにそれぞれの思惑の中で押し屋の殺害を目標とする。
鈴木、鯨、蝉が押し屋という一人の男を巡って出会い、運命が交錯する。
物騒な裏社会に足を踏み入れてしまった鈴木はどうなってしまうのか?
「殺し屋」が主人公の刺激的なストーリーながら、それぞれの心の闇や葛藤を描く、深みのある伊坂幸太郎のヒット作品。
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グラスホッパーの詳しいあらすじとネタバレ
ここからはネタバレを含む詳しいあらすじを紹介していきますので、未読の方はご注意くださいね!
裏社会に巻き込まれた鈴木
元教師の鈴木は、妻を殺された復讐を果たすため、フロイラインという裏社会では有名なヤバイ会社に入社していた。
復讐相手は、この会社の寺原社長の息子。
鈴木がやっていたのは若い女性に声をかけては怪しげな薬を売りつけるという仕事だったが、組織幹部の比与子から復讐目的で入社してきたのではないかと疑われ、疑いを晴らしたければキャッチで捕まえた若いカップルを拉致し殺すように鈴木に迫る。
そしてその現場には、当の復讐相手である寺原息子が立ち会うという。
スクランブル交差点で車を止めて寺原息子を待つことになったが、鈴木は気が気ではなかった。
するとなんと、鈴木と比与子の目の前で寺原息子は車にひかれてしまった。
寺原息子は誰かに背中を押されて道路に飛び出したように見え、そしてそこから立ち去る人影を見た。
比与子の指示でその立ち去った人間を追うことになった鈴木。
その男の後を付け、自宅を突き止めたところ、妻と幼い子供がいることがわかった。
比与子からは絶対に逃がすな、今手柄を立てれば鈴木にかかっている疑いを晴らすことができると言われるが、鈴木はその男の自宅については教えなかった。
子どもがいるのでどうにか逃がしたいという気持ちと、自分の復讐相手だった寺原息子を殺してくれた男であるという複雑な気持ちもあった。
「押し屋」と呼ばれる殺し屋、作品の中だけに存在すると信じたいけれど、こういう役割の人、実際にいるのかもしれないと本当に思いました。
自殺屋/鯨(くじら)という男
鯨は190cm90kgの大男。
自殺させることを生業としている。
梶という政治家は自らにかけれらた献金疑惑を秘書におしつけるため、鯨に依頼し、秘書に自殺をさせようとしていた。
いつものようにホテルの一室で鯨は仕事を終え、ホテルの部屋からたまたま下を見下ろした時、押し屋による交通事故(に見せかけた殺人)の瞬間を見たのだった。
鯨は、最近寝床にしている新宿の公園に戻った。
ホームレスの一人、田中という男から「夜うなされている。お前の周りには亡霊のようなものがいる」と言われる。
さらに田中は、亡霊の原因は鯨の仕事であり、仕事をやめれば亡霊も消えるといったアドバイスのようなことを言い始める。
鯨はその話を聞きながら徐々にこれが現実か幻覚かわからなくなるような感覚を感じていたが、田中の「仕事を辞めるためには一つずつ複雑なものを消していくこと、清算すること、やり残したことがあるならそれをやり遂げること、対決が必要」といった言葉を深く受け止めていく。
鯨がやり残した仕事、それはかつて押し屋に仕事を取られたことだった。
つまり、鯨の対決相手は押し屋であり、押し屋を殺すことによってすべてを清算できる、鯨はそのように考えた。
この自殺屋という存在も、本当にいそうで戦慄しました。そんな生業のくせに、自分が自殺させた人物の亡霊に苦しめられていることや、足を洗いたいと思っていることなどが鯨の人間らしさを感じさせますね。でも「対決が必要」の発想はまったく共感できませんが(>_<)
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ナイフ使いの殺し屋/蝉(せみ)という男
蝉は茨城県水戸市の住宅街のとある家で、一家3人を皆殺しにしていた。
上司の岩西が受けた依頼に基づき、蝉が手を下すというのがいつもの流れだが、なぜこの一家が殺されなければならないのか蝉は正確には知らなかった。
仕事を終えた蝉は、この家のテレビで『抑圧』という映画を見るが、ここに登場する少年が、自由がなく操り人形のように扱われている姿を自分と重ね、凄く不愉快な思いをする。
自分も岩西から逃れられないという感覚が常にあった。
蝉は仕事を終え、岩西のマンションにて今回の報酬300万を受け取ると、自宅に戻った。
帰宅してくつろぎかけていたところ、岩西に呼び戻される。
梶という政治家から殺しの依頼が入ったという。
指定されたホテルの部屋に前もって潜み、梶とともに部屋に入ってきた大男を殺す、それが今回の依頼だった。
蝉は2日連続で仕事をすることに気持ちが乗らなかったが、結局は岩西の指示通りホテルに向かった。
岩西のことが嫌いで、逃れたくて、でも逃れられない、その感情がこの物語ではすごく重要。本中では一切描かれていませんが、蝉の生い立ちが気になる。
押し屋の槿(あさがお)とその家族
翌日鈴木は押し屋の家を訪れる。
家の前をウロウロしていると、小学生の少年に声をかけられ、父親を呼び出してもらうと男は槿(あさがお)と名乗った。
あなたは押し屋なのかということはとても聞けず、家庭教師の営業を装ってどうにか家に入れてもらう。
比与子から追及の電話があったが、脅しにびくびくしながらも決して住所は言わず突っぱねる。
妻のすみれと次男の浩二郎も帰宅し、鈴木は一家全員と顔を合わせることになり、本当に殺し屋の家族なのかと思うほど普通の家庭ぶりに面食らう。
長男の健太郎とはサッカーをして交流するなどますます情が移る鈴木に対し、比与子は再三電話をかけプレッシャーを与えていた。
鈴木は槿の家で食事までごちそうになり、仕事は何かなど探りを入れるが、欲しい情報は得られなかった。
しかし一方で、槿の独特の雰囲気や会話から、この人は間違いなく押し屋であると確信していた。
本来裏社会に生きるような男ではない鈴木が、すごく勇気を出して組織に抵抗している姿は思わず「頑張れ!」と応援したくなります。
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鯨の不思議な能力
鯨は、昨日の依頼主である梶から次の仕事を頼みたいと呼び出される。
待ち合わせ場所のホテルに向かいながら、幻覚が鯨に訴えていた。
梶からのこの呼び出しはワナではないか?
鯨は確かに依頼通り秘書を自殺させたが、それは逆に言えば梶の最大の秘密を握ったいうことでもあり、梶自身がそのことを一番気にしていた。
翌日に仕事の依頼をしてくるというのは怪しいのではないか。
そのことを承知の上で鯨はホテルに向かった。
ホテルのロビーで梶と会い、その後部屋へ移動すると、梶は明らかに様子がおかしい。
鯨のことが信用できず誰かに始末を依頼したのではないか、その予定が狂い挙動不審に陥っているのではないか、そう考えた瞬間、鯨は梶を自殺させることにした。
鯨はいつものように自分の目を見つめるように指示し、不思議な力を使って梶をその気にさせ、結果梶は自ら長い遺書を書き首を吊った。
鯨は梶が死ぬ前に最後にかけていた電話番号を手に入れていた。
その電話番号にかけると相手は岩西だった。
自殺屋という生業が本当にありそうで怖いと感じていたので、鯨に特殊な能力がある、という表現を見て正直ほっとしました。一気にファンタジー感が出てようやくグラスホッパーの世界に入り込めた感じ。
蝉も押し屋を探し始める
蝉は、岩西の操り人形のような状況から逃れたい気持ちが強く、裏社会の情報屋として有名な桃という女に会いに行き、情報を収集する。
桃から
- 毒殺専門のスズメバチという殺し屋がいること
- 自殺屋の鯨という男がいること
- 寺原の長男が押し屋によって殺されたこと
などを聞く。
蝉は途中で寄り道したせいで、指定された時刻にホテルに着くことができず、遅刻して部屋に入ると、小柄な男が首を吊っていた。
状況からこの男は梶だろうと考えたが、説明が面倒で、携帯の電源を切り岩西に報告しなかった。
再び桃に合った蝉は、
- 押し屋にはほとんど情報がないこと
- 押し屋の居所を知りながら隠している男がいる
- 寺西らがその男を呼び出し拷問しようとしている
という情報を得て、寺西らよりも先に自分が押し屋を殺すということを目標にする。
岩西の操り人形ではないことを証明したかった蝉にとっては、情報のない押し屋を誰よりも先に見つけて殺すということは絶対に必要なことだった。
鈴木、鯨、蝉のまったく接点のなかった3人に「押し屋」という共通項が出来てしまったことにより、鈴木はさらにわけのわからない状況に陥っていくわけです。
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拉致される鈴木
槿の家にいる鈴木のもとに、比与子から再び電話があり、一度こちらに戻ってくるように説得される。
戻れば無事ではないことはわかっていた鈴木だったが、比与子から「寺原息子が息を吹き返した」という言葉に動揺し、戻ることを決める。
槿に駅近くまで送ってもらうことになったが、車内でも核心に触れることはできなかった。
待ち合わせ場所の喫茶店にて比与子からを押し屋について追及されるが、鈴木は「あの人は押し屋ではなかった」と答える。
しかし、鈴木はすでに薬を盛られた後であり、意識を失ってしまった。
気づくと鈴木は拘束器具で両手両足を固定されており、移動中の車内にいた。
押し屋の居場所を言わない限り、拷問すると比与子から通告され絶対絶命だった。
この状況でも吐かない鈴木はたいしたものです。裏社会の人間じゃないのに。
岩西と鯨の対決
岩西から住所を聞き出しマンションに行ってみると、あっさりと部屋に入ることができた。
岩西は鯨の姿を見ると、蝉がやるはずだった大男が目の前にいるというこの状況をすぐに把握した。
岩西に個人的な恨みなど全くなかったが、鯨は「清算するため」に岩西を自殺させることにした。
途中、鯨に幻覚症状が現れ岩西に逆襲されそうになったりもするが、いよいよ岩西を自殺させるというその時、蝉から電話がかかってくる。
岩西は目の前に鯨がいることや、自分が今から飛び降りようとしていることなどは一切言わず、蝉に対し「頑張れよ」「負けんなよ」といった言葉を残し、電話を切ると鯨の目の前で窓から飛び降り自殺した。
この電話で蝉は、押し屋を自分が先に殺そうと考えていることや、情報を持っている男(鈴木)を横取りしようとしていることなどを岩西に話していた。
電話の後、岩西はそのことを鯨に言い、わざわざ蝉の写真を見せ、蝉が向かっているビルの場所も教えた。
目的は「2人の対決を見たいから」と言った。
岩西と蝉の関係性が面白いシーン。情があるような、応援しているような、でもわざわざ鯨を対決させるように仕向けたりと、一言では表せない不思議な関係性です。
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鈴木と蝉と鯨が揃う
鈴木が今まさに拷問を受けようかというその瞬間、蝉が飛び込んできた。
蝉は男2人をあっさり殺したが、鈴木を拘束しているベルト外しに手間取っているうちに比与子が逃走してしまった。
鈴木は蝉に助けられた形になったが、結局今度は蝉に押し屋の居所を追及され、車に押し込まれて道案内するように迫られる。
その瞬間、蝉が何者かによって車から引きずり降ろされた。
鯨だった。
蝉が建物に飛び込んで対決している間に到着した鯨は、ひそかに車に忍び込んでいたのだ。
杉林まで蝉を引きずっていくと、二人はここで初めて対面した。
鯨によって岩西が自殺させられたことを知った蝉は、自分でも自覚しないまま動揺しており、結果的に隙をつかれて鯨の目を見てしまった。
みるみるうちに黒い感情があふれだし、自らの首を切ろうとする蝉だったが、この時またしても鯨は幻覚に襲われ暗示が解けてしまい、形勢が逆転する。
追い込まれた鯨は銃で蝉を打った。
鯨は最初からずっと幻覚を見ていたけれど、この時は蝉も岩西の幻覚を見ており、現実との区別がますます曖昧になる不思議なシーンです。
鈴木と槿の再会
急に蝉が引きずり出されポカーンとしていた鈴木だったが、その隙に必死で逃げようとしていると車に人が乗ってきた。
槿だった。
槿は、最初から鈴木が家庭教師の営業などではないことはわかっており、駅で降ろした後もずっとつけていたという。
鈴木は自分の素性をすべて明かし、槿の家族が危険にさらされていること、すぐにみんなで家から離れた方が良いことなどを必死で訴えたが、槿は無表情のまま一向に焦る様子も見せなかった。
反対する鈴木を連れて自宅に戻った槿は、すみれや子供たちを集め「自分たちは家族ではない」と驚くべき告白をした。
告白の内容は衝撃的なものだったが、すべてがつながり解決したかに思われた。
しかしその時、鈴木は大切な妻の形見の指輪を無くしていることに気づき、自分が連れ込まれた建物に探しにいくことを決める。
鯨が待ち構えているとも知らず…
すべてが終わった時、鈴木はもしかしたらこの2日間の体験は幻覚だったのではないか、とひそかに思っていた。
- 鯨はなぜ鈴木が戻ってくると知っていたのか
- 二人が出会い、鯨はどうなったのか
- 不思議な体験は幻覚だったのか
鈴木、蝉、鯨、槿とまったく異なるキャラクターが見事に交錯しますが、独特の世界観は作品を読んでこそです。
ぜひ手によって読んでみてくださいね!
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グラスホッパーを読むなら電子書籍がおすすめ
昔ながらの「紙書籍」の他に、最近ではスマホやタブレットを使う「電子書籍」もかなり普及してきましたよね。
ですがまだ電子書籍デビューをしたことがないという方も多いと思います。
電子書籍は
- 場所を取らない
- 重くない
- スマホさえあればいつでも読める
- 紙書籍より安く購入できることが多い
という嬉しいメリットがあります!
そして私が実感しているのは、紙書籍よりもどんどん読み進められるという特徴もあります。
紙書籍は手元にないと読むことができませんが、スマホに入れて持ち運べる電子書籍なら、突然できた隙間時間を活用することができるんです。
一日のうち、ちょっとした隙間時間って意外と多いもので、そういう時間で本が読めればとても唯意義な時間になります。
電子書籍未体験の方も、これをきっかけにぜひ試してみてくださいね!
まとめ
今回は、伊坂幸太郎さんの『グラスホッパー』のあらすじネタバレを紹介しました。
殺し屋が主人公という刺激的な設定ですが、ヒット作品というのも納得の面白さでした。
とにかく私は冒頭数ページが怖くて怖くて、鯨が自殺させるシーンでは「政治家の秘書が自殺するって本当によく聞くけど、こうやって自殺させられているんだろうか」というリアル感にドキドキし、
また、蝉が一家惨殺するシーンでも「一家〇人殺害事件とかで、なぜか証拠がなかったりいつまでも犯人が捕まらなかったりって実際にあるけど、こういうプロがやってるんだろうか」とまたしても違う意味でドキドキし、リアルすぎて本当に怖かったです。
ですが、徐々にフィクションっぽくなっていって、逆にほっとして作品を楽しめたように思います。
蝉の闇の深さを「しじみ」を使って表現したり、岩西との関係性をほんの数語の短いセリフで表現したりという独特の世界観にどっぷりつかり、読んだあとは「ほぅ」とため息がでました。
未読の方はぜひ読んで世界観を味わってみてくださいね!
では、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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